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オッカムの雪国

トンネルを抜けると、そこは雪国であった。
そんな淡い記憶で、
年に一度くらいは誰もが引用する川端康成。
何ごとも、記憶に残る謳い出しというのは功罪で
私のように記憶力の弱いのだと、
わかったような解らないような、曖昧さ。

論文のタイトルにも通じるなぁ、と
棚に上げたままの自分の仕事、その遅さが
ちくりと痛みますが
取り敢えず日々の満員電車をやり過ごすために
雪国を再度、手に取りました。
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

書き出しの一節は、献血をしながら読んだのですが
アッと小さく叫びました。
(看護師さんは驚いていました)
しかし私は覚え違いをしている。。
なんとなく言いたいことは同じでしょう?ではダメで
表現の美しさに敬意を表すなら、
きちんと覚えていなければ、それは贋作です。
幾人が間違った表現で彼を記憶しているのか。

そして非常に残念なことに
どうやら私はここ数年かけて、誤ったオッカムを
自分の中に育ててしまったようでした。

全くといって良いほど行間が読めない。
彼女が私の手をとった
とか
こちらを気にかけている
とか
そんなあからさまな表現が無いことには
殆ど何も理解出来ない。
何とつまらない人間に成り下がったものかと

何度も何度も話においてけぼりにされ
36歳の康成の文章を、幾度もページを逆繰りながら
まるで美しくて下卑ていない推理小説を
読んでいるようでした。

因みに、古びた装丁でも矢張り
旧かながお勧めです。
もちろんジャンルに依りますが、例えば
真新しいピカピカの魔法書なんて
読みをアフォードしないと思うんですよね。
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Comment


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駒場新入り |  2011.05.07 at 15:56 編集
高層ビルでスーツ姿の君がバリバリ仕事をするシーンを想像してみたら、不意にニコニコした。川端康成の本より、ここの日記を読む方が楽しいかも。

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